黒田壌

「りんごは迷ったら切るな! 」。壌が守り続ける、父からの教えだ。
黒田農園では桃も手がけるが、福島県下でも有数のりんご農家。そのりんごの剪定が実に難しい。「桃は迷ったら切っていい、と教わりました。
ところが、りんごは樹と語り合わないと決断できない。じっくり対峙しても裏切られることがある。一生かかってもわからないのかもしれない」と壌。果樹農家に転身した二代目の父・武は、2人の息子たちに後を継げとは言えなかったという。

黒田さんの画像

太陽を浴びる無袋栽培に、葉とらず栽培。
りんごは美しさより、味わい重視に限る。

壌の毎日は、父・武と二人、りんごの樹に話しかけることから始まる。果樹園の広さは1ha。接ぎ木で増やすりんごの樹は、果樹のなかでも手がかかることで知られている。父が息子に農業を勧めなかった理由は、りんごには、農業の経営計画を立てたくても立てられない難しさがあるからだ。

壌は二男としてのびのび育った。農業高校を卒業後、大学へ進学。農業を継ぐ気はまったくなく、農業とは無縁の学部で学んでいたが、ゼミにりんごをもっていくと、教授陣がそのおいしさを絶賛。「農業は不確かな要素が多いけれど、人に喜ばれるいい仕事なんだな」。そう確信した壌は、父に家業に入る決意を告げたという。

剪定する黒田さんの画像

今、黒田農園のりんごは10種ほどあり、主力はサンふじ。サンは太陽を意味し、見た目の美しさより、りんご本来の味を重視する無袋栽培で育てている。「蜜が入っているりんごが好きな人って多いですよね。サンふじに蜜を入れるには、できるだけ葉っぱを残しておいて、葉が黄色くなって落ちるまで実を収穫しない方がいいのです。完全な樹上完熟です」と壌は自信をのぞかせる。いわゆる『葉とらずりんご』で何よりも味が自慢だ。黒田農園のりんごを食べると、誰もがリピーターになるという。

実ったりんごの画像

「味がまとまるまで樹に実をつけておくというのは、まるで精神修業です。風が吹けば採りたくなるのが人情というもの。りんごの樹が採ってくれというまで、じっくり時間をかけて待つだけです」と父・武。

目が届く規模、身の丈に合った規模だからこそ実践できる農業がある。青森、長野というりんごの大産地にない魅力的なりんごづくり。壌はりんごと語ることで、国見産りんごのポテンシャルを高めている。

バスケットに入ったサンふじの画像

サンふじは、ちょっと磨くだけでツヤツヤに。その理由は果皮にワックス成分がついているから。このワックス成分はりんご自身が保存性を高めるために分泌しているものなので、食べる直前まで磨かない方が鮮度を保てる。

農家だから知ってる!おいしい知恵。

葉とらずりんごの魅力

りんごには自然と蜜が入る品種もあるが、ふじは葉を残しておかないと蜜が入らない。葉が光合成でつくった養分がりんごの実に送り蜜となる。ただし、樹に葉がたっぷりついているので、赤い色づきにムラがでたり、果皮に傷がつくことも。それも葉とらずならではの、おいしさの証。

輪切りのりんごの画像

りんごは冷蔵保存

樹上完熟させて蜜がたっぷりで糖度が高く、とてもおいしいりんごは、その蜜が傷みを招いてしまうことも。りんごは蜜が多いほど保存が難しい。黒田農園では大型冷蔵庫を完備し、大切に保管。ご家庭でも、冷蔵保存で、おいしさキープ。

冷蔵されたりんごの画像